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少し前までは日本で販売されている錫製品といえばほぼ伝統工芸品だけだったものですが、最近では多くの業者より商品が販売されております。


業界が活気づくのは喜ばしい事なのですが、一度に広まりすぎて購入を検討されているお客様、店舗の販売員の方ともに各々の違いが伝わっていないように感じましたのでここに簡単に記しておきます。


なお、ここで述べる「本錫」とは「伝統工芸品 大阪浪華錫器」がつかっている材料でありであり、伝統工芸品指定以前(1983年指定)および他産地の製品につかわれているものは含まないことをご了承ください。



材料の違い
錫製品の材料を大きく分けますと
  • 純錫
  • 錫合金(本錫・ピューターなど)
の2種類がございます。

純錫はその名が表すように錫100%のものでして、色合いの良さと変色のしにくさに優れているもののその柔らかさゆえに用途が限られている現状があります。

いっぽうの錫合金は錫にほかの金属を加えて加工しやすい適度な硬さと性質を持たせた代わりにほかの金属の割合だけ色合いのくすみ、変色しやすくなっております。

それぞれの錫の比率としましては
  • 純錫 100%
  • 本錫(大阪浪華錫器で使用) 97%
  • ピューター(錫90%以上の外国製錫製品の総称) 90%以上
となっております。



歴史の違い
それぞれの材料は「おもにどう使われてきたか」による違いでもあります。

まずは本錫から

最近はお酒に関することばかりが取り上げられがちな錫ですが、現在につながる日本の錫器は中国からお茶を輸入した時の入れ物(茶壷)を日本で再現することも必要とされてまいりました。

ですので、お茶の酸化を防ぐための密閉した入れ物を作る。を実現する「ろくろで削る」ことができ、ある程度の「変形しない硬さ」がある。

この2つの条件を満たすことができるのが本錫となっております。


ピューターに関しましてはさほど詳しくないのですが、お皿を中心とした生活食器としての歴史と立体的な装飾を好む文化からか日本のものよりも固く、鋳造をしやすい性質をしております。

そして立体的な装飾をよりいっそう際立たせるために、あえて変色させる(色をつける)ことができる配合にしているようです。


そして純錫なのですが、これは比較的最近に富山県の高岡銅器の会社が発売したところから急速に広まっているモノでございます。

「手で好きな形に曲げられる」ことをうりにして始まりまして、フルーツボウルやタンブラーを中心に多くの商品を見かけるようになりました。

ただその性質ゆえに蓋のような精度が必要な加工をすることができない。削りにくく滑らかにすることが難しい。鋳造の難しさから精緻な形を作れない。

と本錫を基準としておりますので悪口のようになってしまいましたが、「純度は高い方がいい。」とは一概にはいえないという事はご理解いただきたいのです。



純錫、本錫、ピューター、それぞれに歴史があり、使い方がございます。
それを踏まえましたうえで目的と好みに応じて適切なものを選んで頂ければ幸いでございます。


錫の違い・簡易表
 錫の割合硬さ鋳造のしやすさ変色のしにくさ
純錫
100
×
×
本錫
97
ピューター
90以上
×


間違いや分からないことなどの指摘、お待ちしております。