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数ある金属の中でも古代7金属の一つとして歴史のある錫ですが、ものごとの一つひとつを見てもなかなか理解することができないのが歴史というものでございます。

ですので、錫の歴史を集めた年表を作ってみることにいたしました。


錫に関係していると思われることのみをわたくし個人の独断と偏見にもとづいて選び出しておりますので、照らし合わしたいものごとが載った別の年表と対比させながら見られることをおすすめいたします。

とくに工芸業界で宣伝されるものごとにつきましては目立つようにしておりますので、それがいつごろ言われるようになったのかを理解する手助けになれば幸いでございます。

またこの年表も考えや理解が及んでいないこと、間違いを記述していることもあると思いますので何か問題がありましたらご連絡お願いいたします。



なお年代に異論があるものや人物に異説があるものなどはあえて省いているものもありますので、この表は「こういう物事があった」程度の参考にとどめ、より詳しく調べられることをおすすめします。



紀元前3000年ごろ
イラン高原で錫が採掘され始める。
中近東地域で青銅が作られ始める。
紀元前2600年ごろ
エジプトで青銅が作られ始める。
紀元前2000年ごろ
イギリス、コーンウォール地域で錫が採掘され始める。
紀元前
1580 ~ 1350年
第18王朝時代のエジプトでメンフィスの墳墓に錫製の指輪や壷(巡礼者の壷)が埋葬される。
紀元前1520年
中国で殷王朝が誕生し、青銅製品が大きく発展する。
紀元前1200年ごろ
前1200年のカタストロフが起こり、近東、地中海周辺地域の青銅器文明が相次いで崩壊する。
紀元前770 ~ 221年
東周時代の中国で、斉国の人が「周礼(しゆらい)」の散逸した「考工記」を再編し、用途に応じた青銅の作り方を記述する。
紀元前430年ごろ
ギリシアの歴史家ヘロドトスが著書「歴史」のなかで錫を産出する島、カッシリデス諸島を記述する。
紀元前334 ~ 30年
ヘレニズム時代のギリシアの占星術師が惑星と金属を結びつけ、木星は錫と照応関係を持つとする。
紀元前320年
ギリシアの哲学者テオフラストスが錫メッキについて記述する。
紀元前300年ごろ
イタリアのローマで水道管の溶接にはんだ(錫-鉛)が使われる。
紀元前284年
ギリシャのロドス島で、ロドス包囲戦の戦勝記念として青銅製の太陽神ヘーリオスの巨像(ロドス島の巨像)が完成する。
紀元前200年ごろ
弥生時代中期の福岡県カルメル修道院内遺跡に小児用の錫釧が埋葬される。
紀元前100 ~ 0年ごろ
佐賀県神埼郡の吉野ヶ里遺跡で錫を使い青銅を製造し始める。
500 ~ 600年
関東以西の地域の古墳に錫製、および鉄地に錫を巻いた耳環が埋葬される。
600年
遣隋使が中国に向けて派遣される。
600 ~ 800年
北海道から東北にかけての地域の古墳に錫製の釧、耳環、環状製品が埋葬される。
700 ~ 800年
「錫薬壷(正倉院 北倉128)」が伝来する。
752年
東大寺盧舎那仏像(奈良の大仏)の開眼供養会が行われる。
800年ごろ
イラクのバスラで錫釉が開発され、それを使った陶器が作られ始める。
806 ~ 810年
兵庫県養父市の明延鉱山が採掘され始める。
1240年
チェコのボヘミアでブリキが開発される。
1252年
銅造阿弥陀如来坐像(鎌倉の大仏)の建造が開始される。
1317年
ヴェネツィアのガラス工がガラスに錫をメッキした鏡を作り始める。
1347 ~ 1349年
ヨーロッパでペストが流行し、衛生を保つ為にジョッキ(タンカード)に蓋が付けられる。
1400 ~ 1500年ごろ
日本と東南アジア諸国との貿易で東南アジアの錫が日本に輸入される。
1445年ごろ
ドイツのヨハネス・グーテンベルクが活字合金(鉛-アンチモン-錫)を使った活版印刷を発明する。
1484年7月7日
天皇の御所に仕える女中の日記「御湯殿上日記(おゆどののうえのにっき)」に錫の容器についての記録が書かれる。
1495 ~ 1498年
レオナルド・ダ・ヴィンチがミラノにあるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院に壁画「最後の晩餐」を描く。
1596年
中国で李時珍が薬学書「本草網目(ほんぞうこうもく)」を刊行し、井戸の底に錫を沈めて水を浄化することが記述される。
1603 ~ 1604年
長崎で日葡辞書(日本語をポルトガル語で解説した辞典)が発行され、錫とは酒を入れる錫製の徳利、あるいは筒形の瓶と説明する。
1655年11月15日
明暦元年11月15日に八木主水佑元信が薩摩の谷山で錫山鉱床(錫山鉱山)を見つける。
1658年
薩摩藩主の島津光久が仙厳園に錫門を建立する。
1663 ~ 1723年
琉球国由来記の中で康熙年間に琉球に中国から錫器製造技術が伝わったと記される。
1665年
京都の観光案内書「京雀」が浅井了意によって刊行され、五條橋通にすず屋が記述される。
1712年
百科事典「和漢三才図会」が寺島良安により刊行され、錫製の徳利の効用を説く。
1714年2月2日
錫屋半兵衛(のちの錫半)が大阪の心斎橋に開業する。
1735年
売茶翁が東山に茶亭・通仙亭を構え、煎茶を売って暮らすようになる。
1800 ~ 1900年
フィンランドで錫を使った占い「tinan valaminen(ティナン ヴァラミネン)」が庶民に広がる。
1810年
イギリスでピーター・デュラントがブリキの缶詰の特許を申請する。
1812年
ナポレオン・ボナパルト率いるフランス軍がロシアより敗退する。
1838年
デンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが「しっかり者のスズの兵隊」を「子どものための童話新集 第一冊」に収録し刊行する。
1850年
ロシアを大寒波が襲い、ピューター製のパイプオルガンがスズペストを起こし崩壊する。
1854年 ~ 1860年
和歌山県海南市の黒江地区を産地とする紀州漆器が蒔絵の技術を導入し金粉、銀粉、錫粉をつかい模様を付けるようになる。
1868年10月23日
明治元年 旧9月8日、新政府が年号を明治とする。
1872年
大阪の錫器製造業者、中村半兵衛(錫半)が錫器の浮模様を改製し、漆を塗りこんだ「イブシ色付」を開発する。
1880 ~ 1890年
イギリスの植民地であったマレー連邦諸州が錫の採掘を大幅に拡大し始める。
1909年
銅鉱山であった兵庫の明延鉱山で錫の鉱脈が見つかる。
1910年
スイスのアルミ精錬会社 J.G. Neher & Sons が高価な錫箔に代わるアルミ箔の製造販売を開始する。
1912年3月29日
南極でロバート・F・スコット率いる南極点探検隊が全滅する。
1914年6月28日
サラエボでサラエボ事件が起こる。
1919年1月18日
パリ講和会議が行われる。
1937年
日中戦争(支那事変)が勃発し、中国との戦闘に入る。
1941年12月8日
大日本帝国、アメリカとイギリスに対し宣戦布告する。
1942年2月15日
大日本帝国軍がシンガポールを占領し、マレー半島一帯を占領下におく。
1944 ~ 1945年
戦時の物資困窮のため貨幣の金属を回収し、変わりに南方占領により余裕のあった錫を使った錫貨が発行される。
1945年9月2日
大日本帝国が降伏文書に調印し、太平洋戦争終戦する。
1949年
大阪錫器株式会社が設立される。
1956年
錫の需給を調整し、価格の安定させることを目的とした第1次国際錫協定が発足する。
1961年6月
クロムメッキによる錫を使わない缶用表面処理鋼板 TFS(Tin Free Steel)の「ハイトップ」を東洋鋼板が販売開始する。
1983年4月27日
大阪の錫器製造が、通商産業大臣(現経済産業大臣)より伝統的工芸品「大阪浪華錫器」の指定を受ける。
1985年9月22日
プラザ合意が成立し、急速な円高ドル安が進む。
1985年10月
国際錫市場への中国、ブラジルの新規参入によって価格が暴落し、国際錫理事会(ITC)が財政破綻する。
1987年3月
明延鉱山が閉山する。
1990年7月
国際錫協定(ITA)が終了する。
1996年
錫半が廃業する。
1998年
イギリスのコーンウォール地域の錫鉱山がすべて閉山される。
2003年6月
キリンビールが瓶の表面に酸化スズをコーティングした軽量瓶への切り替えを完了する。
2006年
イギリスのコーンウォールと西デヴォンの鉱山景観が世界遺産に登録される。
2006年7月1日
欧州連合(EU)がRoHS指令として電子機器に使うはんだの鉛の使用を制限する(鉛0.1wt%以下に限り使用可能)、これに対応する為にはんだの成分の錫比率が高まる。



参考書籍

大阪の伝統工芸-茶湯釜と大阪浪華錫器-

元素の百科事典

元素をめぐる美と驚き―周期表に秘められた物語

大英博物館 古代エジプト百科事典

匠TAKUMI 錫半カタログ

日本の伝統工芸品産業全集4 漆器

日本の美術371 古墳時代の装身具

レアメタル.資源-38元素の統計と展望



参考PDF

王朝表と稲分類
http://chuubunkai.web.fc2.com/chuubunkaihp/cbk.pdf/mihori2015.06.07.5.pdf

缶用表面処理鋼板の産業技術史
http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/037.pdf

国際すず理事会事件
http://www.hamamoto.law.kyoto-u.ac.jp/kogi/2009/2009kiko/09sekinin_ITC.pdf

1-3 国際錫協定 - JICA
http://www.jica.go.jp/activities/schemes/finance_co/loan/pdf/after/1-3.pdf

日本包装学会
www.spstj.jp/publication/archive/vol20/Vol20_No3_1.pdf

関西大学大学リポジトリ 錫器の歴史と現在 ― 製品の種類を中心に―
http://kuir.jm.kansai-u.ac.jp/dspace/handle/10112/2882

第1次大戦直後のコーンウォール錫鉱山業 衰退産業と地域そして中央政府(1)


参考HP

Wikipedia 各ページ
https://ja.wikipedia.org/wiki/

イスラーム地域研究5班 研究集会報告 aグループ第8回中近東窯業史研究会報告
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~5jimu/reports/000211-j.html

えみし文化ゼミナール 2003年 資料集「閉伊村のえみし」Ⅵ - えみし学会
http://www.emisi.com/material/14_2003.9/hei-4.htm

オリエント用語解説
http://www.yk.rim.or.jp/~kimihira/yogo/03yogo01_1.htm

明暗を分けた運命の決断 スコット極点隊全滅へのカウントダウン
http://www.japanjournals.com/index.php?option=com_content&view=article&id=1736:-robert-f-scott&catid=72:survivor&Itemid=103

描かれた動物・植物 江戸時代の博物誌 第1章 江戸博物誌の歩み
http://ndl.go.jp/nature/cha1/index.html

株式会社神戸製鋼所 アルミ・銅事業部門 販売網機関紙 歴史を見たマテリアル 第5話
http://www.inter-link.jp/back_no/rekishi/rekishi_5.html

国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/

錫(スズ)の話 -海峡植民地の鉱山開発
http://www.ne.jp/asahi/lapis/fluorite/column/malayfr.html

大和千葉製罐株式会社 缶詰の歴史
http://www.daiwachiba-can.co.jp/products.html

日本スペリア社 はんだ本舗 誕生と歴史
http://nihonsuperior.co.jp/solderhonpo/birth-history/

レファレンス共同データベース
http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000156534

ガラスびんのリデュース|キリンの容器開発と3R|環境への取り組み|キリン
http://www.kirin.co.jp/csv/eco/special/recycle/glass02.html




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