33_1

前回の年表を作るにあたり、いろいろと資料を目にしていますと

「ここにこういう記述がある」

という記述をよく見かける事になったのですが、具体的な内容がわからなかったり前後の流れがわからなかったりと頭を抱えることが多くありました。

昨今は多くの資料がデジタル化されると共にインターネットを通じて閲覧できる様になっており、かつては資料室で探すしかなかったものが簡単に閲覧できる様になっておりますので、個人的なメモもかねて探した資料の内容、場所を記載しておきます。

錫への理解を深めると共に、販売される際のセールストークの一助にでもして頂ければ幸いでございます。



絵画

屏風「紙本金地著色洛中風俗図(洛中洛外図屏風(舟木本))」

元和初年(1615)頃
 
33_2g
e国宝 国立博物館所蔵 国宝・重要文化財 重要文化財 洛中洛外図屏風(舟木本)
http://www.emuseum.jp/detail/100318/001/044?word=%E4%B8%8A%E6%9D%89&d_lang=ja&s_lang=ja&class=&title=&c_e=&region=&era=&cptype=&owner=&pos=1&num=2&mode=simple&century=

京都の市中・市外の様子を描いたいわゆる洛中洛外図の舟木家に伝わったもので、左隻、右端中央のあたりに錫屋(錫引き)が描かれています。


ロクロで徳利を削る姿には描き手の不理解がうかがえる点があるものの、店先に徳利・盃をならべ商いをする様子からは当時の錫屋をうかがい知ることができます。




日本における婚礼と葬式(Ceremonies usitees au Japon pour les mariages et les funerailles)


パリ 1819年
 
国際日本文化研究センター 日文研データベース 外像
http://www.nichibun.ac.jp/ja/

33_26_2g
花嫁の調度.手懸,引渡,錫子,貝桶,御厨子,黒棚,衣装掛け.錫子,(解説なし,酒樽,銚子.銚子提,長柄銚子,小角,蛤).熨斗と鯛
http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/GAI/info/GE009/item/009/


33_26_1g
婚礼のための部屋の飾付けと調度.花嫁の両親が花婿をもてなす部屋
http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/GAI/info/GE009/item/011/

オランダ東インド会社の商館長として79~80、81~83、84年の3度、日本に滞在していたイサーク・ティチング(Isaac Titsingh) が執筆した日本に関する2部構成の本の第2部である「Ceremonies usitees au Japon pour les mariages et les funerailles(日本における婚礼と葬式)」のなかの「花嫁の調度」の図、および「婚礼のための部屋の飾付けと調度.花嫁の両親が花婿をもてなす部屋」の図の中に錫子が描かれております。

わたくし、錫子という言葉を聞いたことがありませんでしたので解説文の邦訳が記載されております「ティチング 日本風俗図誌(新異国叢書7 雄松堂書店 昭和45年12月4日)」を確認しましたところ

スウス(錫子) Sousous
酒を注ぐための銚子の一種

日本風俗図誌 334ページ

との説明があり、それに加えて「静岡みきのくち保存研究会」のホームページの中、「瓶子とお神酒徳利(http://www3.tokai.or.jp/mikinokuchi/heishi.htm)」のページにも説明がありまして、曰く「庶民の婚礼の際、瓶子の代わりに使用されました。」とのことで図に描かれているものはおおむね瓶子とおなじ認識でよいようです。


また邦訳本の301ページからはじまる「三々九度の作法」「婚礼の宴会の作法」「両家縁結びの盃」「一家結びの盃」には錫子をつかった一連の作法が、330ページの「錫子の飾り方」には飾り方が記されておりますので興味を持たれた方は確認してみると新たな発見があるかもしれません。



詩文

夏草


明治31年(1898年) 12月


藤村詩集


明治37年(1904年) 9月 島崎藤村

 33_6

国立国会図書館デジタルコレクション 藤村詩集
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/876416
173/291ページ 婚姻の祝の歌 其1 花よめを迎ふるのうた

明治から昭和にかけての詩人にして小説家、島崎藤村(本名 島崎春樹)が発表した詩集「若菜集」「一葉舟」「夏草」「落梅周」の4つをまとめた1冊になりまして、その中の「夏草」に錫の提子をふくむ詩が収められております。

ここには一部を抜粋して記載しておきますので、全文はリンク先のページで確認のほどお願い致します。


「祝の酒は香(か)にあふれ 錫の提子(ひさげ)をひたしけり いざや門邊(かどべ)にたちいでて きみの来(きた)るをむかへなむ」



-N