古代七金属のひとつにして「易しい金属」という文字のとおり「錫」は最も基本的な金属のひとつとして世界各地で使われてまいりました。
その結果として「現地での言葉」が生まれるとともに、よそから入ってきたものに関しては「よそから入ってきた言葉」が使われることになり、訓読みでは「すず」、錫杖でおなじみの音読み「しゃく」、また元素名は英語の「tin」ですが元素記号は「Sn」とまるで関連性を見出すことができず周期表を前に混乱していたものです。
それらの言葉について限定的ではありますがここに記しておきますので、理解の一助にしていただければ幸いでございます。
まずは元素記号の「Sn」、これはラテン語の「stannum」をもとにしておりまして、語源としてはサンスクリット語の「stan(硬い)」までたどれるそうでございます。
モース硬度が1.5の錫が「硬い」を語源としている、というと不思議な気もしますが、これはおそらく錫の鉱石である「錫石(cassiterite)」のモース硬度が6.5とガラスやナイフよりも硬いことに由来していると思われます。
「stannum」は銀鉛合金をさす言葉だった、という記述も見かけましたが、プリニウスの博物誌に寄れば鉛鉱石を精錬したとき最初に溶け出す物質として「stagnum」という銀鉛合金が挙げられてはおりましたが、これは錫とは分けて語られておりますのでどこかの時点で言葉が混じったのか記述の間違いか、どなたかご存知の方がおられましたら解説をお願いいたします。
ラテン語を語源としたいわゆるロマンス諸語であるスペイン語「estaño」、ポルトガル語「estanho」、ルーマニア語「staniu」などもこの言葉から派生しているそうです。
また英語においても錫の鉱山は「stannery」、黄錫鉱は「stannite」、スズ酸塩は「stannate」と今ではほぼ使われなくなっているとはいえ、古代ローマの公用語であったラテン語の影響力を感じることができます。
ギリシア語では「kassiteros」
上で出ました「錫石(cassiterite)」やフェニキア人を通じて古代ヨーロッパ世界に錫を供給したイギリスの呼び名であった「錫の島(cassiteride」」「カッシリデス諸島(the Cassiterides)」とヨーロッパ地域での錫の歴史をひも解くと関連した言葉を見かけることが多くなる言葉でございます。
この言葉もサンスクリット語の「kastira」までたどることができるそうで、インドの錫を手に入れたフェニキア人が最初にヨーロッパへ錫をもたらしたことに関係しているとか。
私見ですが日本では鉱石標本は「錫石」、不純物が少なく宝石としてカットされたものは「キャシテライト」「カシテライト」と表記されることが多いようです。
英語では「tin」
この言葉の語源は高地ドイツ語の「zin」に由来するそうでして、同じ「ゲルマン語派」に属しているドイツ語「zinn」、オランダ語「tin」、フィンランド語「tina」などもこの語源から派生しているそうです。
古来より豊富かつ上質な錫鉱山を持つイギリスでは錫は日常生活の中で幅広く使われ、産業革命以後は日の沈まぬ大英帝国として新たな物品、新たな概念が多く生まれ、それをさす言葉として多くの新しい言葉、新しい言い回しが生まれました。
「ティン」「チン」という金属を叩く音から生まれたともいわれる「tin」は音に関する言葉との関連も多く
「tinnitus(耳鳴り)」
「tinnient(澄んだ音でチリンと鳴る)」
「tin ear(音痴)」
「tink(高い音を立てる)」
「tinkle(チンチン、リンリンと音が鳴る)」
鍋やコップ等の日用の金属器を修理する職人は「tinker」とよばれ、tinkerのような声でしゃべるのはピーターパンでおなじみの「tinker bell(ティンカーベル)」
鍋を叩くようなけたたましい音は「tin pan(ティン・パン)」、レコードの普及していない時代、音楽会社が楽譜を売るため試演奏を行っていたアメリカ、ニューヨークの一画は
「Tin Pan Alley(ティン・パン・アレー、アレーは横丁の意)」と呼ばれることになりました。
産業革命によって缶詰をはじめとした大量のブリキ(錫をメッキした鋼板、英名 tin plate)が使われるようになってからは「tin」はブリキをさす言葉としても使われるようになり、それとともに錫(とブリキ)を使っているかどうかにかかわらず(工業化によって生まれ、心理的に缶詰を連想させた)金属製品をさす言葉としても使われるようになったようです。
兵士のかぶる鉄かぶとは「tin hat」呼ばれることになり、街にあふれる大衆自動車、フォード・モデルTは「Tin Lizzie(ティン・リジー、ブリキのエリザベス嬢の意、エリザベスは信頼できる使用人の俗称)」と呼ばれるようになったのもこの影響でしょう。
しかし(それまでと比べて)あまりに大量に普及したがゆえに、また「メッキ」に対する人の心理の結果として「安物」や「虚飾」をさす言葉としても使われることになってしまい
「tin pot(見掛け倒しの)」
「tinhorn(はったり屋)」
「tinsel(ピカピカ光る飾り物)」
「tin arse(ひとりよがりの)」
缶詰の空き缶をつかってモノを請う乞食は「tin cupping」と呼ばれ、詩人ラドヤード・キップリングが「the little tin god(小さなブリキの神)」という表現をつかってからは「tin god」は見かけ倒しの凡人をさす言葉とされ、ほかの素材で作られたものと比べて品質が悪いとされたブリキ製のポットが街中に出回ってからは尊大な権力者を「tinpot」と呼ぶようになったとか。
さて最後に日本、および中国の「すず」「しゃく」なのですが、これがどうにも分かりませんでした。
日本では奈良時代には錫は「白なまり(金へんに葛、読みはしろなまり)」と呼ばれていたらしく、これに関する記述が出てくるのは平安時代初期に編纂された「続日本紀」の文武天皇二年(698年)六月乙亥の条らしいのですが、ここでは「伊予国献白なまり」と記されております。
ではこの当時は「錫」という漢字(言葉)が無かったのか、というと同じ続日本紀の文武天皇四年(700年)二月戌子の条に「令丹波国献錫」とありますので文字は存在したようですが、「白なまり」と「錫」はどう違うのか、ということになると確定的な記録は無いらしく
「これはこうである」
と断じている記録をみつける事はできませんでした。
時代ごとの名称の変化として、おおざっぱには
奈良時代:白なまり
平安時代:白鑞(びゃくろう、しろめ)
と変わっているようですが、注意事項として平安時代前期までは 白鑞=錫 でよいのですが、中期以降の白鑞は多量の鉛が含まれる 錫鉛合金 に変わっているそうです。
また「白鑞」がいつごろから「錫」に変わったのか、ということに関してもまとめた資料をみつける事ができませんでしたので、1603年刊行の日葡辞書までの間に変化した、ということしかできませんのでどなたかご存知の方がおられましたら御教授のほどよろしくお願いいたします。
そしてこと古代から江戸時代までの日本語に多大な影響のある中国での記録なのですが、どうにも分かりやすい形でまとめられている資料が少ないのが現状でして、中国での書籍の刊行とその翻訳を待っているのが現状でございますので、こちらもどなたかご存知の方がおられましたら御教授のほどよろしくお願いいたします。
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